Innovative thinking driving consistent Australian production growth

2年毎に行われるオーストラリア・マカダミア産業会議の2018年会議が終了しました。クイーンズランド 州ゴールドコーストには生産者を始めとする多くの産業関係者が集まりお互いに交流を深め、経験を共 有し、新しい知識を吸収し、会場は活気に満ちあふれていました。

オーストラリアのマカダミア産業は、近年、自国の生産量と他国での生産量の両方が増加する中で大き な転換期を迎えています。マカダミアの生産とマーケティングにおける世界的リーダーとして、オーストラ リアは今ダイナミックかつ多くのチャンスを秘めた時期にさしかかっています。 

今年の会議では、我々の業界がかつて見たことのないほど革新的な考え方が示されました。テクノロジ ーによって推進される生産性と効率性は私たちの未来を支配し、これらへの投資は、より一貫し高品質 で信頼できる供給を可能にし、世界的な生産が増加する中で生まれる新しいチャンスをフルに生かすこ とができるでしょう。 

業界最大のイベントのハイライトをいくつかご紹介します。 

未来のマカダミア農場 

今、マカダミア農場では大きな技術開発が行われています。業界コンサルタントのクリス・セラル博士は こう語ります。「我々は今、農業における技術革命の時を迎えており、今日のためだけでなく、未来のた めの農場を建設する必要があります。オートメーションと精密農業の導入は我々を最先端に位置付ける でしょうが、他をリードするためにはアーリー・アダプターになる必要があります。」 

マカダミア生産性農学者のダン・マンソン氏は、リアル・データの重要性を強調しました。  

「今ではテクノロジーによって、樹木が環境にどう対応しているかをリアルタイムで監視できるようになり ました。このデータのフィードバックを利用して環境をより良い方向に操作し、樹木のストレスとなってい るポイントにすぐ対応することが可能になります。」 

テクノロジーによって測定可能な変数のうち最も強力なデータとなるのは樹木の水分利用とストレスで、 特に水は樹木の成長と生産性を推進する大きな要因となります。ダン氏は、樹木の水分ストレスを可視 化するツールとして樹液流量センサーと湿度計を導入することによって、いち早くストレスに気づくことが 可能であると力説しました。ストレスの早期発見を行うことによってナッツの早期落下を最小限に抑え、 生産性を最大化することが出来ます。 

ツリー・シェイカーと呼ばれるツールも大きな技術的進歩のひとつで、全ての樹木から最大限の収穫量 をあげるのに役立ちます。ダン氏によると「樹木には、下に落ちてこないナッツが必ずあります。シェイカ ーを使うことで1本の木当たり1〜2kg多くのナッツを収穫することが可能となり、その分収益が大きくな ると同時に、次のシーズンに向けて樹木をリセットする貴重な時間を確保することができます。」 

イノベーション・スイート・スポット 

オーストラリア・マカダミア協会の市場開発マネージャー、リン・ゼイリクは、製品開発の観点からイノベ ーションの重要性を説明し、このようなイノベーションがいかにして業界の未来を確保するかを力説しま した。   

「現在、シリアル、菓子、アイスクリームなどの製品カテゴリーで、マカダミアはまだまだ世界的に活用さ れていないため、今後の原材料として大きなチャンスを秘めています」とリンは語ります。 

マカダミア業界の国際マーケティング戦略の礎石である「イノベーション・イニシアチブ」は、マカダミアが 製品イノベーションに貢献できる役割を食品メーカーが発見できるよう支援するプログラムです。

「マカダミアがどのような製品に使われる可能性があるかを理解するために、我々は複数の市場で多く の研究を行い、その結果、マカダミアは製品イノベーションにとって最適であることがわかっています。 すべてのナッツは現代の消費者にとって魅力的ですが、研究からマカダミアは特別な価値をもたらし、 購入の障壁を取り除くことが分かっています。 マカダミアを原材料に使うと、他のナッツとは違って製品 やブランドの価値が上がるのです。」 

「ベ ーカリーのカテゴリー では、マカダミアを加えるとプレミアム感が増し、高い競争力を持つことができ、 また スナック カテゴリーにおいては、マカダミアをほんの数粒加えるだけで、より贅沢でうっとりする経 験を作り出すことができます。マカダミアは、噛みごたえ、食感、味の点でユニークな経験を提供し、味 付けをするのにも適しています。また、プレミアム価格を付加することを可能にし、現在成長している『気 持ちを満たすためのスナック』にぴったりです。」 

研究によって示されたインサイトは、第1回 マカダミアイノベーションチャレンジの優勝者であるキン ガ・ウォジェハウスキーさんからも支持されました。「マカダミアは味が非常に複雑です。ナッツのようでバター のような味は他のフレーバーと大変相性が良く、このことはどの製品カテゴリーにおいても重要です。また、 グローバルでの食品イノベーションという観点でも、様々な国や地域の地元の味と合わせることが出来、とて も大きなメリットになります」とキンガさんは言います。 

持続可能な未来 

オーストラリアのマカダミア農家は、自然を使った害虫駆除や植物病管理を行ってきた歴史があります。 例えば、多くの農家が害虫駆除にはタマゴコバチを利用し、齧歯動物への防除には在来のメンフクロウ を利用しています。 

過去20年間、新しい害虫の出現や抵抗があり、また消費者の食品生産方法への見識の高まりなどを 受け、より厳格な調査が実施されるようになりました。  

昆虫学者のポール・ホーン博士は、総合的病害 虫管理(IPM)の一環として採用されている自然を使った害虫駆除や歴史的管理方法が作物の保護にと って大きな役割を果たしていることを説明しました。  

一方、マカデミア保全信託団体(MCT)は、野生のマカダミアの樹木を見つけて保存するという、業界の 未来のために不可欠な活動を継続しています。

「野生のマカダミアが存在するというのは、他国との競争上の大きな優位性となります」とMCTのデニ ス・ボンド氏は説明します。

「野生のマカダミアは遺伝的多様性と生きた遺伝子の宝庫です。 MCTは、ブ リスベンの野生のマカダミアが永遠に失われる前に、それらを追跡するためのプロジェクトであるワイル ド・マカダミア・ハントを実行しています。  

また、世界最大の野生マカダミア樹木園を計画しています。」 

さらなる品質改善を目指して 

消費者の期待がかつてなく高まっている今、高品質のマカダミアを維持するのは非常に重要です。オー ストラリア・マカダミア協会の産業開発マネージャーであるレオニ・コイェティーンは、高品質な製品を維 持するには農場の品質を高めるしかないと言います。  

「我々はいくつかの市場で強力な足掛かりを持っていますが、消費者の期待する高い品質に応え続け ることでしか今の地位を維持することは出来ません。今後、世界的に大規模な生産の時代が始まります。 その環境の中で、世界最高品質のマカダミアを作る必要があります。」 

「カーネルの優れた品質と回収を実現するには、品種、環境、栄養、土壌の健康、害虫と病害との戦い、 潅水、受粉、といった様々な要素の総合的な管理が必要です」とコイェティーンは述べました。 

コイェティーンは、収穫効率の改善が品質向上への近道だと考えています。 「農場から加工業者へ迅速 に運搬を行うことが非常に重要です。 私たちは現在、平均的な販売可能カーネルの回収において他の 生産国を上回っていますが、さらに改善できると思っています。」 

業界の未来 

今回の会議は、マカダミア以外の農業知識を学ぶ理想的な機会を提供しました。 オーストラリア最大の サラダリーフ生産者で、2017年ABC農業生産者の年間最優秀賞受賞者であるバルマー・ファームズの マネージング・ディレクター、アンドリュー・バルマー氏が自身の貴重な経験と教訓を共有してくれました。  

バルマー氏は何年もの厳しい天気事象が続いた後、それまでとは違ったアプローチを試みることにしま した。 「私は天候の犠牲者でいることをやめて、世界のベスト・プラクティスを適用することで、自分の運 命を最大限にコントロールすることにしました。」 

こう決意したバルマー氏は、他の農家が何を実践しているかを自分の目で見るために、世界中の農場 や農業関連会社を訪問しました。 旅から帰った彼は、新しい作物、設備、そしてテクノロジーを持ち帰り、 わずか18ヶ月で自身のベビーリーフ事業の規模を6倍にし、驚異的な成長を遂げることに成功しまし た。現在、バルマー・ファームズは年間2,500万豪ドルを超える事業を展開しています。 

バルマー氏は、オーストラリアの農家の将来について楽観的です。 「オートメーションが普及する中、イ ノベーションは常に大きなテーマとなるでしょう。 赤外線技術や農場内気象観測所、完全自動化灌漑シ ステム、そしてドライバーレス・トラクターなど画期的な技術が続々と登場する現在は、生産者でいるの が非常にエキサイティングな時代です。」  

中国でのチャンスとリスク 

  我々の産業にとって、市場としても同じ生産者としても、中国の重要性を否定することはできません。 今 回の会議では、中国が提供するチャンスについて議論が交わされ、先日中国で行われた国際マカダミ ア・シンポジウムと中国の生産者視察ツアーで学んだことを振り返りました。 

ラボバンクのティム・ハント氏は、米国と中国の緊張の高まりや、両者の貿易戦争がオーストラリアのマ カデミア産業にとってどのような意味があるのかを解説しました。 

オーストラリアと中国の自由貿易協定によって2015年以降関税は大幅に引き下げられ、来年はゼロに なる見込みです。 中国では所得の伸びによって急速に小売業が伸びています。 

ティム氏は、市場の成長だけでなく、中国市場へのアクセスも拡大していると説明しました。 

「中国は、オーストラリアの安全なサプライ・チェーンと、ヨーロッパや米国にはない食品にまつわる物語 を評価しています。アリババのようなプラットフォームを通じ、オーストラリア食品のインターネット販売も 急速な発展を見せています。 これらの2つが合わさって、中国での売上量も売上高も上昇しています。」 

それでは、米中の貿易戦争は我々にとってどのような意味をもたらすでしょうか。 短期的には、為替の 変動によりオーストラリア製品は米国製品に比べて魅力的に見え、また我々の中国への輸出品は米国 よりも競争力があるため有利です。  

しかし、長期的にはある程度のリスクがあるでしょう。貿易戦争によって米国と中国双方の経済が収縮 し、支出も全体的に縮小するでしょう。市場の多様性を維持し、緊急時の対応策を考えながら、状況を 見守る必要があるでしょう。

生産の面では、レオニ・コイェティーン、リン・ゼイリク、ジョリオン・バーネットの3者は、最近中国で過ご した経験をもとに、マカダミア産業がこの6年間に記した大きな進歩について触れました。

中国のマカダミア生産は、広西チワン族自治区、雲南省、貴州省、広東省の四省に集中しています。栽 培面積は192,500ヘクタールで、5700万本の樹木が植えられています。中国のマカデミア産業は、政府 の補助金を得て貧困緩和策として発展してきており、テクノロジーの利用は少なく、人間の労働の割合 が高いのが特徴です。 収穫は手作業で行われ、収穫後の設備は徐々に改善されている段階です。  

リン・ゼイリクは、中国でのマーケティング概要を説明し、世界の他のどの国よりも中国はデジタル・メデ ィアの利用が高く、オンライン・ビジネスの成長スピードが速いことを示しました。「新しい小売業はオンラ インとオフラインを上手に組み合わせています。ブランドは、消費者に両方の体験を提供する必要があ ることを認識しているからです。」 

中国の6大スナック・ブランドは、ナッツに関するビジネスを確立しています。 「パッケージング、ブランデ ィング、マーケティングはどれも非常に洗練されています。彼らはオンラインで展開しているため、ビッ グ・データの収集を得意としており、消費者について非常によく理解しています」 

ジョリオン・バーネットは、中国はまだまだ初期段階だと考えている、と述べて講演を締めくくりました。 「植林は進んでいますが、生産が軌道に乗るのはまだまだ先です。今後の進歩も山あり谷ありでしょう が、中国人のポジティブな気持ちとヴィジョンは大変素晴らしいものがあります。中国は、マカダミア産業 に対して大きな敬意と価値を付加しています。」 

この会議はオーストラリア・マカダミア協会が主催し、プラチナ・パートナーであるホート・イノベーション の支援を受けています。 

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