マクロ・トレンド 2020: 何を食べて、何を飲むかを決定づける原動力とは

オーストラリアのマカダミア業界がグローバル・マクロ・トレンドについて初めて調査を行ったのは2017年、その先5年間のインターナショナル・マーケティング戦略に基づいたものでした。食品や飲料の消費パターンの原動力となっているものは何かを調査し、その後の3年間に渡り実施された一連のカテゴリー別消費者インサイト調査の幕開けとなりました。

それ以降、世界でおこったさまざまなことは、自分自身を、また世界そのものの見方を変えるほどの影響を与え、それは商品やブランドの求め方、あり方にも変化をもたらしました。

そこで、今の世界の状況を知るために、再度マクロ・トレンドの調査を行いました。その変化はとても興味深いものと言えるでしょう。今回は、2020年のマクロ・トレンドと、それが食品や飲料の生産者やブランドにとっての意味とは何かをご紹介します。

2017年のおさらい

2017年は、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任、Brexit交渉が本格化するなど、政治的な激動に支配された年でした。また、 「フェイクニュース」への意識が高まり、#metoo運動が大きく盛り上がりを見せた、COVID以前の世の中でした。

2017年の5つのマクロ・トレンド

  • 健康管理: 健康は 一種の通貨
  • 今すぐここで: いつでもどこでも必要に応じて食べる欲求による、スナックや軽食分野の成長 
  • 高い透明性: 消費者の信頼度の低下による、透明性や本物志向への熱望
  • 味のフュージョン(融合): 世界はボーダレスになり、味やフレイバー、食べ物、伝統が融合されるようになる
  • 記憶に残る食品: 幸福と楽しみをもたらす食品や飲料品の潜在力

2020年 他に類を見ない年

2020年の特徴は「緊張」といえ、大きな不確実性と不安の時代として歴史に残るでしょう。ここオーストラリアでは、家屋、仕事、生活を破壊するほどの壊滅的な森林火災から年が始まりました。一方、香港では何千人もの大規模デモが行われ、中国ではCOVID‐19が国中に広がり始め、結果的に世界規模のパンデミックを巻き起こしました。5月に米国で起きたジョージ・フロイド氏の死は、哀しみをもたらすとともに、正義を求める大規模なBlack Lives Matter(ブラック・ライヴス・マター)の抗議行動に火をつけました。

2020年の新たなマクロトレンド

今回の調査では、現在みられる5つの新たなマクロ・トレンドが見つかりました

#1: 自己アイデンテティの変化と「シルバー津波」

あるがままの自分

2020年は「自己アイデンティティ」、あるべき姿ではなく、あるがままの自分に喜びを感じることが中心となります。自分が何者であるか、人生に何を求めているか、誰を愛しているか、自分の外見など、自分自身のすべてを受け入れることです。「私は私」「あなたはあなた」などのマントラのように、消費者が自分自身を心地よく受け入れることで古い規範が根こそぎ捨てられ、不完全さと人との違いを認めあうことが勝るのです。

2020年の世界的な出来事により消費者行動には、一方は偏狭で恐怖心の強い消費者、もう一方は「YOLO」(人生は一度きり)とふるまう消費者の二極化がみられます。

根強いグローバル・フュージョン(グローバルな融合)

グルーバル・フュージョン(グローバルな融合)がわれわれのアイデンテティを定義し続けています。これは食品関連にも顕著に表れており、境界線を曖昧にし、あらゆるものの良いところだけを組み合わせる、例えば、カンガルー寿司やタコスバーガーなど、まったく新しいフード・シーンを作り上げています。消費者は新しさを求めており、トレンドに沿った目新しい食べ物は社会的通貨となり、まだ誰も知らない食べ物を発見することに価値が置かれています。

若者の魅力 vs シルバー津波

ミレニアルやZ世代の若い世代は魅力の持ち主。彼らはブランドに若々しさ、カッコよさ、イノベーションをもたらし、その特徴的な態度と行動は、年配の世代が彼らの行動を分析し、自らの世代に繋げようとしているほどです。

若い世代はよりよい未来へ大きな夢をもっていますが、金銭的な問題により彼らの熱意はうちのめされる可能性は高く、住宅価格の高騰、厳しい雇用状況、技術がさまざまな役割を担うことで、より多くの若者が長く家に留まることになります。  

しかし、ブランドやマーケティング担当者には、若さや若者への執着により、差し迫った「シルバー津波」がもたらすチャンスに目をつぶることのないよう、注意を促しています。今後数年で、パワーバランスは、若い世代よりもまだお金を持っていて健康的な高齢の消費者にシフトしていくでしょう。2050年までには、人類史上初めて、世界で60歳以上の人の数が子供よりも多くなると予測されており、ますます巨大な市場となる状況です。これらの高齢の消費者は:

  • 消費重視
  • 品質の高いサービスを好む
  • 使いやすい商品を好む
  • オンラインショッピングに抵抗ない

2030年の平均的な60歳は、今の60歳よりも若く見え、健康的で、彼らがお金をかけてもいいと思っている製品はほぼ今の高齢者向けの製品ではないといえるでしょう。

#2: 明確さとトランスペアレンシー(透明性)

2017年に“高い透明性”として取り上げられ、徐々にトレンドとして高まってきました。政府に対する世間の監視がこれまで以上に厳しくなり、消費者の見聞きするものへの信頼が損なわれているこの時代に、明確さとトランスペアレンシーは信頼を築き上げるために不可欠要素となっています。そのため、ブランドはホワイトノイズを排除して、誠実さ、明快さ、透明度の高さを求め、必要に応じて出所をきれいにし、間違いを認めようとする傾向があります。

不明な原材料の使用や無節操な製造者を恐れる消費者が、製品の由来を知りたいという要求が高まるにつれ、原産者の存在が表に出てきています。

その一方で、豊富な情報と選択肢の多さに圧倒されることもあるでしょう。消費者は、精神的な負担を軽くするシンプルな説明書、オプション、ラベリングを求めており、必要に応じてより詳細な情報を入手することを望んでいます。

現在、透明性はデータにも及び、大規模なプライバシー侵害に消費者は慎重になっています。ハッキングやデータ侵害技術は、常に法律や盗難防止技術よりも一歩先を行っており、特に欧米消費者の間ではデータへの不安が高まっています。アジア市場、特にWeChatが圧倒的なシェアを誇る中国では、テクノロジーと個人情報の共有がより容易に受け入れられています。

#3: コンビニエンス・ダイコトミー (便利さの二分法)

便利さは常に重要ですが、2020年には新たな意味が加えられています。「より速く」「より簡単に」というだけでなく、消費者がコントロールし、小さな勝利達成のために手助けとなる製品を用いるためのサポート役となるのです。

この傾向は、テクノロジーが人々をこれまで以上に結びつけている一方で、実は引き離しているという皮肉な事実によって引き起こされています。冷凍食品や宅配サービスにより、食事の準備や調理にかかる時間が短縮され、自由に過ごす時間が増えました。しかし、携帯電話に釘付けになり、仮想上では接続されていても、現実にはつながっていない時間を過ごしていることが多いのではないでしょうか。つながりを取り戻すため、ゆったりとした時間を過ごしたいというニーズが高まっており、消費者は、ゆったりとした時間を過ごし、その場にいることを楽しめるような製品を求めています。

しかし、テクノロジーによってもたらされた即時性のため、われわれは待つことに不慣れになっています。そのため、消費者は、当日配達を行うブランドや「配達30分以内、超えたら返金」という食品以外は見向きもしなくなります。ブランドが消費者の期待を裏切らないように管理することが、これまで以上に重要になっています。  

テクノロジーは、私たちがまだ想像できない方法で人生を「より良い」ものにし続けますが、「より良い」ということは、便利さと人生の両方を有意義なものにするということになるでしょう。 

#4: 意識的に食べる

「あなたはあなた」現象は、消費者が厳格な食事と過度の運動を拒否し、“意識的に食べる ”- 健康であるために必要なものと望むもののバランスをとることを意味しています。これは、消費者が暴飲暴食やダイエットの間で自分の進む道を誘導していることです。消費者がどちらか一端、あるいは両方を同時に楽しめるようなマーケティングや製品に反応しているため、大食い用や“ダイエット休日食”などが出てきています。

フレキシタリアン、ビーガン、ベジタリアンの食事は、ケト、パレオ、ノーシュガーダイエットよりも好まれていることが証明されており、植物由来の製品はもはやニッチなものではありません。

メンタルヘルスの重要性についての認識は高く、全体的に健康でいるためにメンタルヘルスは不可欠であるとの見方が高まっています。消費者は、自然に自らの精神的健康を強化する方法として、ヌートロピック(認知機能を向上させる可能性のある物質)やアダプトゲン(ストレスに対処するために体の自然な能力をサポートするハーブの選択グループ)など摂取するものが精神にどのような影響を与えるかを模索しています。

スナックは新しい食事になりつつあり、満腹感や味、栄養価を損なうことなく、外出先でも簡単に食べられる小分けや製品形態の重要性が高まっています。

#5: 環境への熱い想い

消費者は企業に熱意を向け、持続可能な慣行や環境対策を求めています。2019年は、何百万人もが気候変動に対する早急な行動を求めて街頭に繰り出しました。しかし、政府は躊躇し、立法化に時間がかかる中、ブランドが主導権を握り、「エコ不安」を軽減する製品を消費者は求めています。

廃棄物との戦いは激化し、プラスチックへの抵抗が強まっています。オーストラリアの大手スーパーでは2年ほど前に使い捨てレジ袋の使用を禁止し、中国では2025年までに使い捨てプラスチックの使用を全面的に禁止すると発表しています。

しかし、サステナビリティは、廃棄物、再生可能エネルギー、ゼロエミッション、倫理的生産、再利用可能な環境に優しい素材、大気汚染、水の保全、土地の保全など、一人ひとりのもつ意味合いがことなるため、断片的なとらえ方をされているにすぎません。

干ばつ、森林火災、COVID-19などにより中小企業や郊外のコミュニティに困難をもたらしているオーストラリアでは、特に地元の企業やコミュニティを支援したいという想いが存在します。この痛みは、大企業よりも小規模な企業を支援し、地元の企業を支援したいという想いを呼び起こしています。

自然とのつながりを取り戻したいという衝動が、「基本に戻る」製品や食材への訴求力を高め、生の食材や希少な食材の魅力を高めています。これはCOVID-19によりさらに深まり、自分たちで野菜を育て、パンを焼くなど、環境と自らの未来に与えるであろう環境汚染が抑えられるという、プラスの働きを目の当たりにしています。  

もっと詳しく知りたいですか?

これらのマクロ・トレンドに対応するため、貴社の次の新製品にマカダミアがどのような役割を果たすことができるのか、詳細はオーストラリア・マカダミア協会 日本代理 望月英子までご連絡ください。

この記事に記載されたインサイトは、2020年6月、当協会の依頼により調査会社FiftyFive5が行ったマクロ・トレンド調査に基づくものです。

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マカダミアの原産地であるオーストラリアは、太古の熱帯雨林に基づいた産業が盛ん。約6,000万年前にオーストラリアの土壌で誕生し、現在では約50年の歴史を持つ商業用マカダミア農園は、ニュー・サウス・ウェールズ州とクイーンズランド州を中心に、複数の地域に41,000ヘクタール以上の広さで育成されています。

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