2016年、バンダバーグはオーストラリアのマカダミア生産地第1位に認定されました。昨年の生産量は 殻付1万9,900トン(水分含有率3.5%)で、2000年の生産量の約5倍に達しています。
数字で見るバンダバーグ地域のマカダミア産業
樹木本数: 2,200,000
林冠面積: 6,800 ヘクタール
生産者数: 約75
2016年生産量: 殻付1万9,900トン(水分含有率3.5%)
パイオニア精神
リンカーン・ドッグレル氏は1960年代からバンダバーグでマカダミア産業に携わっています。最初の仕事 は砂糖加工業者大手CSR社がクイーンズランド州に保有していたマカダミア農場地の管理で、北はロッ クハンプトン、南はビアーワー、そしてその中間にあるバンダバーグを統括していました。
リンカーン氏によると、CSR社が60年代にマカダミア産業に参入した大きな理由は、当時のCEOジム・ ディクソン氏のおかげだと言います。「ジムは、ハワイで砂糖業者がマカダミア栽培を始めているのを目 の当たりにし、オーストラリアでも産業を起こそうと思ったのです。そしてCSR社が1963年に最初に確保 した栽培地がバンダバーグでした。」
この動きと、バンダバーグに最適な農作物を探していたノーム・グレバー氏によって、バンダバーグで マカダミア産業の第一歩が踏み出されます。しかし当時、CSRの経営陣の中でサトウキビ用の栽培地を マカダミアに転用することに反対する動きもありました。リンカーン氏によると、「CSR社は砂糖生産会社 のバンダバーグ・シュガー社との間に揉め事を起こしたくありませんでした。また、CSR社はサトウキビの 栽培から手を引くという噂がたつのを恐れたのです。」
ジェフ・シバース氏は1990年からバンダバーグでマカダミアを生産しています。ジェフ氏は奥さんのナレ ーラさんと1994年に結婚し、今は二人三脚でビジネスを行っています。この地でCSR社が始めたマカダ ミア生産を拡大していったのは、彼らを筆頭とした冒険心に溢れるパイオニアたちです。1990年に最初 の植樹を行ったシバース家は今では43ヘクタールの土地で点滴かんがいを行い、14,000本のマカダミ アを管理しています。
ジェフ氏がニューサウスウェールズ州のバンガローという街にいる友人からマカダミアを紹介された時、 彼はまだメルボルンに住んでいました。友人はマカダミアの木を栽培しており、毎年シバース家宛に砂糖 用の袋一杯に入ったマカダミアを送ってくれました。「いつも家の裏の階段に座ってハンマーでマカダミア を割る作業をしました。うちの家族で75%を食べて、残った25%は周りの人に分けていました。」
シバース家はヴィクトリア州で五代に渡って核果類とリンゴを栽培してきた農家でしたが、1985年、ジェフ 氏はバンダバーグに移住し、核果類の低温品種の栽培に着手しました。初めこそ順調でしたが、労力も かかり、他の農家が参入するにつれ利益が落ち込みました。そのためジェフとナレーラ夫妻は、他の 作物の栽培を検討し始め、近隣で栽培が行われていたマカダミアに注目したのです。
「マカダミア栽培にかかる経費を計算したところ、最初の数年は多くの投資を必要としますが、一旦 ビジネスが確立されれば他の樹木作物や農作物に比べて人件費が大幅に低いことに気づきました。 実際に初めてみて、我々の考えが間違っていないことが証明されました。もちろん、ここまで来るのには 浮き沈みもありましたが、マカダミア産業は我々にとって金銭的な面でもライフスタイルの面でも大きな 恩恵をもたらしてくれました。」
マカダミア生産に適した自然環境
バンダバーグでマカダミア栽培がこれほどまでに拡大した大きな理由は、その土壌にあります。バンダバ ーグは比較的起伏の少ない地形で、ほとんどの農場が四角い形をしており、マカダミアを長い列にして 植えています。また起伏が少ないことにより、収穫には効率的で大容量の機械を導入することができ、 比較的乾燥した気候により、時宜にかなった農場の運営管理が可能です。
バーネット川を中心に600キロにもわたりパイプラインと用水路を張り巡らせた給水システムにより、乾季 の最中でもかんがい水の確保ができることも、安定して質の良い作物を作る助けになっています。
地理的な適合性とかんがい用水以外にも、下記のような要素がバンダバーグの成長に寄与しています。
- 生産者フォーラムを通じて行われる情報の共有
- 気候
- 他のマカダミア生産地と比べて農場のサイズが大きく、スケールメリットがある
- かんがい設備が整った既存農地価格の値ごろ感による初期投資しやすさ(例:サトウキビ畑)
- マカダミア産業への新規参入者が多様な背景を持っているため、新しく革新的な栽培方法を試し、実践していること
- この地域が機械工学において非常に進んでおり、特に農業における水力発電の利用方法を熟知していること
今後の発展
バンダバーグが今後も発展を続け、オーストラリアのみならず世界有数のマカダミア生産地となることに ついてリンカーン氏もジェフ氏も明るい見通しを持っています。高品質のナッツの高収穫を続けるため、 今後の最優先事項は林冠の効率的な管理方法の開発だとリンカーン氏は言います。
この地域にとって大きく有利となるのはバーネット川の給水システムから得られるかんがい水へのアクセ スの良さです。
「現在、成長の制限となっているのは、他の小さな農作物への需要から来る土地の価格上昇です。 しかし、それでも今後もバンダバーグのマカダミア植樹は増えると思います」とリンカーン氏は語ります。
ジェフ氏もこの意見に賛成です。彼によると、マカダミアの生産量は増える一方でバンダバーグ全体で 1ヘクタール当たりの殻付マカダミアの平均生産量4トンを目指すべきだというのが彼の意見です。実際 ジェフ夫妻は、栽培方法を絶えず見直すことでこの目標を継続的に達成して行きたいと言います。
「バンダバーグは既存の樹木、そして新しく植樹される樹木の両方で生産量を増やす可能性が高いと思 います。以前はマカダミアにあまり適さないと言われていた土地にも苗木が植えられるようになりました。 また、かんがいや肥料の利用を賢く抑えることにより樹木の成長スピードは落ちていますが、1ヘクター ル当たりの収穫量は増えています。IOM (Integrated Orchard Management 総合果樹園管理) や ION (Integrated Orchard Nutrition 総合果樹園栄養学) といったプログラムに、この地域や他の 地域が何をすべきという指針が書かれています」とジェフ氏は言います。
2017年と2018年にかけてバンダバーグ地域のマカダミア農地面積は2,500ヘクタール増える予定 です。オーストラリア・マカダミア産業の生産性開発担当官のロビー・コメンス氏によると、プロフェシ ョナルなマカダミア生産者とは、農園の規模ではなく、長期的な見通しと責任を持ち、絶えず改善を 行う理念によって識別されるとのことです。
「バンダバーグ地域には、このようなプロフェショナルなマカダミア生産者が多くいるのが特徴です。 この事は、バンダバーグの未来にもマカダミア産業全体の未来にも恩恵をもたらし続けるでしょう」 とロビー氏は言います。
「私は、南アフリカ、ハワイ、メキシコといった国のマカダミア生産地を訪れ た経験がありますが、農学、革新性、プロフェショナリズムの3点においてバンダバーグは今後世界 のマカダミア生産のリーダーとなりうるでしょう。
今後の躍進も大変楽しみで、特に成熟した果樹園 管理の革新に大きく期待しています。」