「オーストラリアのマカダミア業界は今日までに磐石な基盤を築いており、新たな機会を最大限 に生かすと同時に、さまざまなマイナス要因を最小化する体制が整っています。このような基盤 をもとに、今、大きな変化の時が訪れようとしています。」10月にクイーンズランド州サンシャイ ン・コーストで開催された オーストラリア・マカダミア産業会議2016のメッセージを包括するとこのようになります。
オーストラリア・マカダミア産業会議2016では、国内のマカダミア生産者、加工業者、販売業者、 投資家、研究者、輸出業者に加えて海外の業界関係者総勢500名が一同に会し、専門家によ る講演が多数行われました。国内事情だけでなく、海外の視点も取り入れた講演の中から、オ ーストラリア・マカダミア業界の明るい未来を予測する8つの要点をまとめてみました。
1. オーストラリアの地位は安泰
オーストラリアの経済評論家でABCニュース経済コメンテーターを務めているアラン・コーラー 氏による キーノート・プレゼンテーションは、現在のビジネス環境、アグリビジネスへの影響、輸出市場、 投資を網羅した非常に力強いものでした。
世界経済は不透明性を増していますが、先行きを悲観するような予想は必ずしも正当化された ものではなく、今後の見通しは明るいと信じるに足る理由はいくつもあるそうです。主な課題は、 アメリカ大統領選挙の行方、債権バブル、中国の債務レベル、欧州の状況などがありますが、 2012/13年度に実施された鉱業セクターでの設備投資により、オーストラリアでは今後5年以内 に不景気に見舞われることはないだろうと考えられています。
オーストラリアでは、教育、観光、製造業、農作物輸出の分野が好調です。「農作物輸出の好 調は、我が国の輸出産業全体を下支えする重要な役割をしており、マカダミアの輸出も大いに 貢献しています」とコーラー氏は語りました。現在、マカダミアの価格は強気ですが、コーラー氏 は、農地面積当たりの生産性を上げることの重要性を説きました。それにより、将来に価格変 動があったとしても、マカダミア輸出の強みを保つことができます。
2. 大きな変わり目
オーストラリア・マカダミア協会CEOのジョイロン・バーネットは、マカダミア業界にとって今がい かにエキサイティングな時期かについて講演しました。「今までマカダミアはニッチな産業と捉え られていましたが、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州では最大の園芸輸出品とな り、まさに大きな変わり目を迎えています。投資に対する見返りも非常に堅調です。また、昔は アメリカと日本への輸出が支えていましたが、今では44カ国へ輸出するようになっており、今後 もこの数は増えるでしょう」とバーネットは語りました。
過去10年に世界のマカダミアの売上は1.5倍になっており、価格も上昇しています。しかし、ま だまだ学ぶべき事、やるべき事はあります。投資マネーがあるうちに効率性をあげる投資を行 うことは、オーストラリア・マカダミアの将来的な安定につながるでしょう。
世界各国からの供給量の増加は大きな課題ですが、その中で市場の期待に応え、自信を確立 し、需要を拡大していくことが産業にとって安定した、かつ持続的な成長をもたらすでしょう。
戦略的なアプローチ、農園での生産性の絶え間ない改良、産業自体の規模拡大、新たな植樹、 生産者の啓蒙。これらの努力を実施することで、我々は未来を切り開いていくことができます。
3. 意義あるブランドの確立
ハバス・ワールドワイドのスティーヴン・コックス氏による講演は、未来の消費者市場を垣間見 る機会を与えてくれました。「消費者がブランドに何を求めているか、大きな変化の波が押し寄 せています。消費者は今まで以上に、日常の中に深い価値と意味をもたらしてくれるブランドを 求めています。」
世界が激動していることもブランドの役割を変化させています。「信頼は変化し、期待も変化し ています。現代の消費者はかつてないほどのパワーを持っているのです」とコックス氏は語ります。
ブランドは3つの基準においてパフォーマンスが必要とされます。今までの市場の主な競争の 場でもある、製品そのもの(安全性、品質、種類等)、また、今はそれに個人の幸せと健康、そ して集団的幸せと健康が加わっています。
全ての基準で良い成績を発揮するブランドは、消費者にとって、より意義深く、価値の高いブラ ンドとなります。有意義度スコアが10%増加するごとに、ブランドがプレミアム価格を提示しても 消費者が離れない可能性が高まります。
幸いにもオーストラリアのマカダミアは全ての基準で高いスコアを獲得しており、市場において も、品質、安全性、技術革新、業界リーダーシップを満たしてるので、将来に向けて良いポジシ ョンを確立している、とコックス氏は説明します。
個人の幸せと健康の視点から見るとどうでしょうか。
マカダミアは、消費者がよりヘルシーな食 生活を送る手助けを提供し、新しいアイディアのインスピレーションを与え、幸福に寄与してい ます。世界情勢が不安定な時代なので、消費者は日々の生活の中で絶えず小さな幸せを求め ており、その気持ちはソーシャルメディアを見たり、スナックを食べたりすることで満たされます。
集団的幸せと健康に関しては、オーストラリア・マカダミアは他の追随を許さないほど最先端を 行っているとコックス氏は語ります。常に未来に投資する姿勢、クリーンでグリーンな生産体制、 そして環境やコミュニティに配慮した活動は、どれをとっても申し分なく非常に進んだ価値を提 供しています。
講演の翌日、セレブリティ・シェフであるマット・ゴリンスキー氏による朝食が参加者に振舞われ ましたが、その中でゴリンスキー氏は、マカダミアの物語がいかに素晴らしく、自分も常に客や 講演参加者に語っていると述べていました。こうやって自然に語られる逸話の中に、意義のあ るブランドとはどういうものかが如実に現れることを実感した瞬間でした。
4. デジタル・マーケティングにより消費者の心をつかむ
オンラインでのPRやソーシャルメディアの活用はかつてないほど重要な意味を持ちます。ステ ィーヴン・コックス氏によると、人々の未来はデジタル・ネイティブや彼らによって生み出される 市場の手中にあり、スマートフォンを決して手放さない消費者にとっては、ソーシャルメディアや モバイルによって消費者需要が喚起され、新しい定義づけがなされます。
コックス氏はこう続けます。「今、人々のライフスタイルや価値観が大きく変化しています。テクノ ロジーのおかげで消費者はブランドと会話したり、消費者同士がお互い会話することが可能と なり、それらを通じて四六時中どこでも手のひらの中だけで世界に対する自分の意見を作りあ げることができます。このような人々の変化は、ブランドがどのように振る舞い、消費者にとって 今日性のあるブランドであり続けるかという問題に大きな影響を与えます。
今の消費者は、ブランドや政府、公共機関の主張よりも、自分と似たような考え方をする人々 の評価やレビュー、点数と言ったものを信頼します。そのため、消費者が意見形成をする空間 であるオンラインやソーシャルメディアの中で行動することが重要です。「こういった空間の出現 は、消費者が自分たちの手で問題に対処しようとしている表れのひとつです。」
もちろんテクノロジーは重要ですが、テクノロジーはあくまでも手段であり、実際に変化を牽引し ているのはコンテンツということです。「消費者の意見や文化を形成するのはコンテンツです。 現代のテクノロジー、特にスマートフォンによって、消費者は人類史上かつてないほどの情報 へ簡単にアクセスすることができるようになりました。」
オーストラリア・マカダミアが実施しているソーシャルメディア、およびコンテンツ・マーケティン グ・プログラムはマカダミアのオンライン・プレゼンスを高め、今後のさらなる変化にも適応する 基盤を作っていると言えるでしょう。
5. プレミアム・ポジショニング
次にコックス氏が説明してくれたのは“プロシューマー”と呼ばれている人々の価値観と行動様 式です。プロシューマーとは、42カ国のあらゆる年齢層の中から選ばれたアーリー・アダプター の別名です。大衆よりも一歩先を行っている集団のことで、彼らの行動を調査することは、一般 消費者の未来を占うことになります。
大変嬉しいことに、オーストラリア・マカダミアとプロシューマーの価値観、行動の間には自然に シナジーが発生しています。
- プロシューマーはブランドの透明性を重んじています。
- プロシューマーは自分が利用している製品やサービスについてより詳しく知りたいと思っています。
- プロシューマーが最も重視するブランド価値は品質と信頼性です。
- プロシューマーはブランド価値の中で革新性よりも誠実性を重んじています。
- プロシューマーはブランドとは利益を追求するだけでなく、環境を破壊しないような運営方 法を実施する道義的責任があると信じています。
- プロシューマーは食品に関してはブランド名よりも産地と栄養価値に興味を持っています。
またコックス氏は、”マインドフル消費”という新しい消費方法にスポットライトを当てました。 「人々は自分が口にする食品の健康上の効用を考えるようになりました。賢い方法で生産され、 消費者にとっても周りの人にとってもポジティブな結果をもたらせてくれるような食品を欲してい るのです。」
同時に消費者は以前よりも冒険するようになっている、とコックス氏は語ります。”フーディズム” というライフスタイルが選択されるようになっているのです。「消費者は今まで食べたことのなか った食品を試すようになっており、栄養を摂取する方法について新しい発見をしています。この 傾向は新興市場では特に重要な意味を持ちます。今までに食べたことのないたくさんの食品、 例えばマカダミア・ナッツを食べたいと思う大きな市場があることを意味しています。こういった 冒険心や好奇心が今後マカダミアのような製品の消費に拍車をかけるでしょう。」
このような消費者の傾向に答えていくことでオーストラリア・マカダミアは既に確立しているプレ
ミアム・ポジショニングをさらに強化し、例え今後供給が増えたとしてもプレミアムな価格帯で勝
負することができるでしょう。
6. 投資ファンドの有効活用
オーストラリア・マカダミア業界の将来の成長にとって、農業関連の投資がどのように行われる かについて理解を深めるのも重要な事です。
オーストラリア有数の農業ビジネス銀行家のひと りデビッド・ウイリアムス氏によると、最近メディアでは中国によるオーストラリアへの投資が話 題となっていますが、それはほんの一端にしか過ぎないとのこと。
「現在、世界各国からオーストラリアの農業に投資マネーが集まってきています」とウイリアムス 氏は語ります。「5年前まではなかった資金であり、またこれから2年後にはまだあるかどうか 分かりません。中国だけでなく、フィンランド、ギリシャ、ロシア、フィリピンからも投資をしたい人 がいます。」
ウイリアムス氏のメッセージは明確です。「もし海外からの資本を活用したいのなら、今がチャ ンスです。アーモンド業界は既に海外資本を利用して過去6ヶ月に16,500エーカーの土地に 220万本の木を植えました。現在多くのファンドが利用できる状態にあり、非常に革新的な金融 策が実施されています。」
ウイリアムス氏はマカダミア業界に大きな野心を持つことの重要性を説きました。「もしビジネス を大規模にしたいという気持ちがあるなら、資金を集めることは可能です。大きな飛躍をする準 備をして下さい。現在オーストラリアに投資したいと思っている機関投資家たちはスケールの大 きさを求めています。」
7. 世界各国の連携と将来を見据えた計画性
現在、世界中でマカダミアの生産が増加しており、既存の産地では収穫量も着々と増え、新し い産地、特に中国では、将来に大規模な収穫が見込まれています。
オーストラリア・マカダミア協会の市場開拓マネージャー、リン・ジルケは、世界の生産量増加に ついての講演を行いました。既存の産地では現在9万ヘクタールの農地がありますが、2022 年には11万5千ヘクタールに増加するだろうと述べました。
アフリカ、南アメリカ、アジアといった新興生産国では2022年に農地は1万5千ヘクタールにな ると予想されています。しかし中国では、形勢を一変させるほどの大規模な開発が行われてい ます。「中国では、2022年には20万ヘクタール、場合によっては27万ヘクタールの農地が生 まれると予想されています。」「つまり今後の6年間で、世界全体で9万ヘクタールから23万ヘ クタール、もしくはそれ以上に農地が増加する可能性があります。」
このように供給量が増加することは大きな課題を提供しますが、オーストラリアのマカダミア業 界は以前からこの課題に取り組んでおり、既に主な分析と産業コンサルテーションは済んでい ます。「2022年に供給量が増えることは見通していたため、我々は過去1年半をかけてこの問 題に取り組んできました」とジルケは説明しました。「生産地域とは協力関係を結び、生産量の 正確な予測や情報収集ができるように努めています。なるべく多くの正しい情報と予測を集め た上で市場に向き合うことで、確実な納品を行い、予測しない事態が起きるリスクを最小化する ことができます。」
供給が増えることはオーストラリアの製品に投資しようとしている顧客にとって追い風になりま す。「生産が増えることで顧客は安定した供給を受けることができるようになります。そのため 、過去にマカダミアを使った革新的製品を作ることを考えていなかった大口顧客もマカダミアに興 味を持つでしょう。現在マカダミアの61%はスナックとして消費され、アイスクリームやクッキー などの加工品はわずか35%に過ぎません。加工分野は大きく伸びる余地があり、生産量の増 加はより大きいシェア拡大につながるでしょう。」
供給量の課題を乗り切る秘訣は何でしょう。ジルケは、それは計画性だと語ります。「我々は常 に計画を作っており、プラン作りに関してはかなり優秀だと思います。2022年までにはまだ時間 があるので、その時間を有効に使って対処したいと思います。」
8. 潤沢な研究開発費と先行投資
世界のマカダミア生産量や消費者マーケティングと並んで今年の会議の重要トピックのひとつ が、農園の未来像です。最先端の研究者がこれまでの成果や今後の予測について語りました。
ケヴィン・クインラン氏、クリス・シアレ氏、ジョン・ウイルキー氏の3名は2022年のマカダミア農 園を描いたヴィジョンを紹介しました。高い生産性、力強く育つ木々、より高密度の植栽、高い 精度の収穫予測と管理といった項目は、まさに今オーストラリアが研究開発に励んでいる分野です。
労働力の安い他国からの競争が厳しくなっている現在、オーストラリアのマカダミア産業にとっ て知識とテクノロジーを磨くことは不可欠です。いかにスマートに働くかが重視される状況にあ りますが、興味深い技術進化も進行しています。例えば、土壌マッピング技術による灌漑対策 や、マカダミアの種類と土壌とのマッチング、GPSナビゲーションを利用した自動トラクター、樹 液流動センサーを利用した樹木の水分測定と水量管理、生産量マッピング、樹木の健康管理 アプリの開発、などが紹介されました。これらのテクノロジーは2022年にはスタンダードとなる ことが期待されています。
最もエキサイティングな技術進歩はロボット工学分野で起こっています。シドニー大学のジェー ムズ・アンダーウッド博士のチームはロボットを使ったプレゼンテーションを行いました。ロボット は既にアーモンド等のナッツ栽培にトライアルとして採用されており、今後マカダミアへ応用さ れる可能性があります。
アンダーウッド博士はこう説明します。「あらゆる木、そしてあらゆる実に関して高解像度データ を収集するのが目的です。それらのデータを処理することで生産者にとって有益な情報となり、 様々な決定を助けることができます。」
アンダーウッド博士のチームが開発したロボット型車両には複数のカメラとセンサーが装備さ れており、自動運転で農園の中を運転しデータを集めます。「収集されたデータから3Dの樹木 マップを作成し、成長率、生産量マップ、花密度、種類による生産量の違い、一列あたりの生産 量、キャノピー(林冠)モデリングなどを測定することができます。これらの情報を利用すれば、 生産者は農園のポテンシャルを最大限に引き出すことが可能です。」
また、この技術は実の品質予測にも使うことができます。「一本一本の木の形状が明らかにな ることから、採光の具合が分かるようになり、実の大きさや品質も予測できるようになります」と 博士は語りました。
感谢每一位贡献和参与到2016澳洲坚果协会会议中的参与者。如您想了解更多信息或想更深入了解以上观点,请联系Lynne Ziehlke。